さて、ここまで現実世界について考察してきました。
現実世界とは、主体としての私の登場しない現実世界そのもののことを指します。そして、これを内省することによって、様々な私秘的なものが見出されるのですが、これらを総称したものが主体としての私です。
これを踏まえて、ここからは現実世界と心の関係について考察します。
主体としての私の大部分を占めるのが、この「心」と呼ばれるものでしょう。私たちが自らのことを主体的な存在だと自負しているのは心があるからです。しかし、古今東西を通じて心の研究はずっと続けられていますが、その概観について私たちが明確に把握しているとは言い難いのが現状です。そこで、心を敢えて単純化し、せめてその輪郭だけでも明確にしようというのが本章の目標です。