第2章 認識論

前章で、像は実物世界そのものを内省して得られる内在的原因であり、なおかつ、内省した途端に私秘的なものとして振る舞うということを見てきました。

ここでは、この像を前提として他の内省を考察し、そのいずれもが現実世界に還元されることを見ていきます。

他の内省とは聴覚、嗅覚、味覚、触覚等であり、さらには感情、過去、未来もこれに含まれます。これらは全て像と同様、現実世界の内在的原因を顕在化させたものです。

そして、その中心的な役割を果たしているのが認識です。

第2章

第1節 視覚以外の感覚について

私は音を聞く。 では、それはどこから聞こえてくるのかと言えば、風鈴の音は風鈴から、小鳥のさえずりは小鳥のくちばしから聞こえてくる。私たちはそう考えています。 これはつまり、音は現実世界で発せられているということです。現実世界とは、私たちが日...
第2章

第2節 感情について

では、感情についてはどうでしょうか。 たとえば花の美しさは花そのものに宿っているのでしょうか。それとも、花を見た私の心に芽生えるのでしょうか。 これも、私たちはその時々によって無造作に使い分けているように思われます。しかし、どちらがより直感...
第2章

第3節 過去について

すでに何度も述べているように、現実世界の全てには認識が働いています。この宇宙に存在している物はもちろんのこと、その運動や様々な出来事も、私の認識なくして立ち現れることはできません。 ここで言う認識とは、視覚で言えば、私が目を閉じてもなお把握...
第2章

第4節 未来について

私は未来を想像します。それは明日の予定であったり、10年後の自分であったり、時には自分の死後もなお残る世界のことであったりします。 これらを純粋に想像している瞬間というのは、本来的に言えば、主体としての私の登場しない現実世界の中の未来そのも...